「歯磨き粉は使ったほうがいいの?使わなくてもいいの?」
日本トウ―スフレンドリー協会広報委員長
松久保 隆 (東京歯科大学衛生学講座)
患者さんから“歯磨き粉を使ったほうがいいのでしょうか?”と聞かれることがよくあります。これは歯科医院で歯科医師や歯科衛生士からの歯みがき指導の経験がある人からの質問のようです。
歯科医師や歯科衛生士が患者さんに歯みがきのときに歯磨き粉は使わないでくださいといっている理由を挙げてみたいと思います。
1. 口の中が泡だらけになって短時間で歯磨きを終わらせてしまう。
2. 爽快感があって短時間で終わらせてしまう。
歯磨き粉を使用すると歯みがき時間が短くなるので歯磨き粉は使用しないように指導しているのです。したがって本来の歯磨き粉の役割とは関係のないことなのです。
それでは、歯磨き粉を利用しない場合、どのようなことが起こるのでしょうか?
1. 歯みがきの時間が長くなる(?)
2. 歯の磨耗が少なくなる(?)
○ 歯磨き粉を利用してもしなくても歯磨きの時間はあまり変わらない。短い人は歯磨き粉を利用してもしなくても短く、むしろ歯磨き時間を長くかけるようにすることのほうが大切です。
○ 歯の磨耗は歯ブラシでも起こります。最近市販されている歯磨き粉の研磨性は極めて低いのでこの心配はないでしょう。磨く時間をかけすぎることのほうが危険です。
3. 口の中の細菌をばらまく。
4. 歯の色が茶色くなる。
5. フッ化物による歯質強化がなくなる。
○ 唾液1mlあたり108−9個(1−10億)、歯垢中にも1mgあたり1−10億の細菌がいます。これらの細菌が、歯みがきによって口腔内の唾液中に出てきます。
○ 歯磨き粉を使用していない人の歯の特徴は歯が茶色くなっていて、見るとすぐわかります。
○ 歯磨き粉に含まれているフッ化物は、歯質強化の働きを持ち、最近20年間に欧米諸国やわが国でのむし歯の減少は歯磨き粉のフッ化物が配合されてから起こっている減少です。フッ化物配合の歯磨き粉のシェアが高ければ高いほどむし歯の発生率は低いことがわかっています。
○ 歯みがき剤にはフッ化物以外にさまざまな薬用成分が配合されています。その機能を利用することも大切です。
このように、歯磨き粉を利用することによって口の中を清潔に保ち、歯の色もきれいになることや、特に強調したいのは薬用成分であるフッ化物の効果を受けることができることです。
フッ化物は子供のむし歯予防のためで大人には関係ないと思わないでください。
成人でも歯肉が下がって歯の根の部分(歯根面)が出てきます。歯根面のむし歯予防にフッ化物は大変有効なのです。特に毎日フッ化物を作用させることができるフッ化物配合歯磨剤の利用は重要です。
また、歯の全面を金属やポーセレン(陶材)で直したからもうむし歯にならないと思わないでください。金属で歯を治してもその隙間からむし歯になることも多くあります。この予防にもフッ化物の毎日の利用で可能になります。
現在市販されている歯磨き粉でフッ化物が配合されているものの一覧表を参考にしてください。